解像度が異常に低いゲーム「どとこい」をプレイしてみた

最近ノベルゲームコレクションというノベルゲーム投稿サイトがオープンしたので面白いゲームがないか漁っていたら常軌を逸したゲームを見つけました。

novelgame.jp

 

タイトルは「どとこい」。

どすこいみたいでイカツいタイトルですが、UIが8bit調ですごい好み。 かわいい。

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さっそく軽い気持ちで始めてみるとギャルゲーにありがちなファーストコンタクト「通学路でぶつかる→イテテテ...」が起きます。

 

テンプレ乙とおもいきや、 

 

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なんだこれは...

ピンク色の正方形が喋っておる...使徒っぽい。

メインヒロインだけかと思いきや登場するヒロインが全員正方形でした。

ビースティ・ボーイズの『Hot Sauce Committee Part Two』のジャケットを彷彿とさせます。

 

サイトの説明文をよく読むと、

 

高校の入学式当日、主人公は悪魔に呪いをかけられます。
それは、主人公から見る美少女の解像度が下がりすぎて、もはや■に見えてしまうというもの。
好感度を上げていけば、女の子の画質も上がり表情が豊かになります。 

 

などと書いてあり、会社の同僚がはまっていた寿司ネタと恋愛する乙女ゲー以来の衝撃です。

 

とりあえず進めて好感度をあげていくと、美少女の解像度がどんどん上がっていきました。これがとても楽しい!!!!

 

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そしてようやくエンディングで各ヒロインのご尊顔が拝めました。

絵もとても好みな感じ。

ありがたみが今までのゲームとは段違いです(当社比)。

 

ギャルゲーって基本的に「エンディングを見る」という長期的な目標に向かって進んでいくので途中で中だるみしてしまいがちなんですが、「ヒロインの解像度をあげる」という中期的目標も設定してあって作り方がうまいなーと思いました。

 

あと全体的にギャグセンスが素晴らしかったです。

ヒロインの好感度をあげると正方形が少し角丸になるなど図形に関するネタも随所に散りばめてあってデザイナがクスッとなる内容でした。

 

また、BAD ENDも普通はだいたい暗くて陰鬱な気持ちになるのですが、一番意味わからなくて笑いました(正確にはBAD ENDではない)

 

自分はこちらの#6e89b8の関根唯ちゃんが最高に好みでした。

思わずPhotoshopのカラーパレットに追加しました。

 

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1時間ほどあれば全ルートプレイできるのでぜひプレイしてみてはどうでしょうか?

 

novelgame.jp

 

Hot Sauce Committee Pt. 2

Hot Sauce Committee Pt. 2

 

 

「美少女とデザイン」を聴いてきた

以前からとてもファンであったBALCOLONY.染谷洋平さんの「美少女とデザイン」という講義が東京造形大であるというので、友人のAurtasさんと聴講しに行ってきました。

 

 

how-to-design.room-composite.com

 

BALCOLONY.は最近だと『君の名は』のロゴ・キービジュアル、『ニセコイ』や『ラブライブ』の円盤パッケージ、『魔法少女まどか☆マギカ』のロゴデザインなど数多くのヒット作のビジュアルを手がけている会社さんです。 

 

www.balcolony.com

 

東京造形大のカイシトモヤさんのオープンゼミということで美大生ばかりとおもいきや、結構一般参加されている方も多く驚きました。(半数くらい?)

 

先に漫画・ゲームとデザインの歴史を紐解いた上で現在の作例を紹介していて納得感がすごかったです。

自分の言語野じゃ文章にまとめきれないくらい濃い内容だったので、備忘録的に箇条書きでメモった内容を貼り付けておきます。(だーっとメモったので間違ってるところあるかもでスミマセン。。。)

 

1970年代美少女の成立以前

 

- ex. エロトピア、アリス
- 劇画だった。
- アニメ絵をエロい目でみるという感覚がない

 1980年代

- 吾妻ひでお
- ロリコンブーム
- アニメ・漫画的美少女を静的な目で消費することの発見。
- キッズ向けの漫画を性的に消費するのはロリコンという文脈でしか出来なかった。
- みんな性的なものを切望していた。
- 最初ブリッコは劇画で売れなかった→リニューアルしてアニメ絵タッチにすると売れた。

 1990年代の普及

- レモンピープル,ロビン
- 美少女ゲーム業界ではデザインの研究がはじめられた
- 同級生、エルフ、きゃんでぃそふと
- パソコンが普及しはじめたと同時に美少女ゲームも普及しはじめる
- どういう色合いが美少女に合うのか研究が続けられていた
- 初期のヒットゲームはドラゴンナイト闘神都市のような王道のRPG+エロ
- 組み合わせではなく美少女とのコミュニケーションを主体にしたものを作ろう
- Libido7(ヌキに特化したゲームを作る)
- 女の子と行為をすることが主体にゲームのデザインがなされるようになった
- この頃のグラフィックは全部ハッチングで中間値をあらわしている
- 以前はエロゲーのロゴも明朝体が多かった(マッチョなイメージ)、萌えというよりは、エロが主体だった。
- マッチョな思想ではない文脈のデザインが求められた
- エロという世界観ではなく草食系のオタク(文化系)のためのデザイン→萌え

1990年代後半

- ハイエンド系(イラストにとどまらないオタクの表現)
- DTPの技術的成熟
- イラストレーターが自分でロゴ等をデザインしはじめた
- Puregirl:デザイナーが出してきたものを断ってCHOCOさんが自分で作った
- メカ好き、イラストレーターっぽい文脈で作ったロゴ:SFチックでエディトリアル出身からは出てこない発想
- オタク自身がグラフィックデザインの言語を開発し始めた

 1990年代後半から2000年代

- コンシューマーゲームに美少女系ゲームが落ちてきた
- ニコ動黎明期
- 電波系ソング(ex.きしめん)
- オタクが美少女に求める前向きさ
- 萌えということばが普及していった
- 10年前に流行っていた地下室で陵辱というマッチョな感じではない
- 主流は学園モノ、平和で不安のない世界観

角川とその周辺:キャラクターを重視したデザインの試み

角川以外(ジャンプなど)

- 漫画のためのグラフィックデザインの王道文法(集英社など)
- すごい暑苦しい表紙(いい意味で。この場合は暑苦しくても良い。)
- 驚異的な密度、文字が退屈じゃないように組まれる。
- アカデミックなデザイン業界でダメと言われていることをすべてやっている
- パッと見てテンションがあがることに重きをおく。
- キャラがみんなカメラ目線でこっちに向かってきている。
- キャラクターの勢いに合わせて文字も組んである。
- 美少女モノとは温度感が違う。

 角川

- 漫画を売ることをあんまり考えていなかったのでは?→キャラクターを売ることを考えていた
- ex. ニュータイプ
- これからはビジュアルの時代だ
- アニメがよく見えるようにデザインしよう
- キャラクターのみを目立たせるようにシンプルにしていた(キャラクターが売り物)
- メディアミックスという理由も考えられる(あくまでキャラが主体)
- 背景が白い(キャラクター以外のものに目が行かない)

 

歴史のまとめ

- 美少女のためのグラフィックデザインとは「キャラクターを売る」ことと共に進化発展してきた。
- 美少女ゲーム, 角川系列出版社をはじめとするキャラクタービジネス
- 軟弱な色彩(マッチョではなく草食系オタクのためのデザイン)
- 美少女キャラクターをいかに魅力的に見せるかということに対する試行錯誤により築き上げられた作法

 

作例1:白い背景

- 「白バック」という一つの究極のデザイン手法
- ex. 『Re:ゼロから始める異世界生活 2巻』:草野剛さんが制作、究極の白バック
- キャラクターを邪魔しない(ユーザーはキャラクターのみを欲する)
- 装飾過多な漫画・キッズ向けデザイン文法とは逆の方法論のため、大人向けという意味合いを付加しやすい(美少女キャラを消費したがる人の多くは大人)
- 高校生・20代〜30代の青年ユーザーが所有したがる
- 大人向け感が出る
- 白は美少女の清純さを演出できる
- 美少女のパンツは白い!(冗談)

 

作例2:脅迫感を与えない色彩設計

- 成立〜90年代は彩色のトーンが原色系
- 漫画文法から色を取ってくるしかなかった
- セル作画による制限?
- 90年代中期以降
- 色彩設計はパステル系(非漫画配色)
- 草食系オタクは自己主張が強い女の子が苦手
- RGBで色彩設計できるようになった(絵の具の番号を指定しなくてよくなった)
- 主戦場がモニターになった
- キャラの主線が黒ではなくカラーになっていった。黒いタイポグラフィーとなじませることができるようになった。
- いわゆる軟弱な色彩(配色だけで美少女の可憐さ・弱々しさを表現できる)

 

魔法少女まどか☆マギカ

- 最初は内容に合わせて萌えの文脈を抜き去った丸みのない尖ったロゴを提案した
- 制作サイドから内容のネタバレになるからやめてくれと言われた
- フォルムだけ魔法少女の文法を抜き出した
- 新編のロゴは萌えの文脈をすべて抜き去った

 

作例3:キャラクターの可愛らしさを、より強調するための背景モチーフ

- ★:ゆるゆりアイマスうる星やつら
- 美少女の背景に★を置くと可愛くなるのはなぜか?
- ★は希望・未来・ロマンチックの記号
- アイマスの円盤のジャケは草野剛さんが手がけているが、★が回転していないし、レイヤーがキャラの上に来ているので、イラストではない文脈で配置しているのでは?
- 草野さんは美少女を可愛く見せるか否かのギリギリのラインのシンプルさを狙っていてすごい
- ★を回転させるか否か
- 回転させたほうが楽しそうには見える
- イケメンがでてくると羽が飛ぶ(かっこよさの象徴)
- 青空(エロゲーのEDは青空) ex. AIR
- 水(清純さ・若さ)
- 桜(はかなさ)
- 謎の光(スローモーションの演出)
- これらすべてはスローモーションで時間を切り取る演出であり、キャラクターの内面を語るために使われる
- 美少女モノに使われるモチーフはわりとクリスチャン・ラッセンに通ずるわかりやすさ
- ラッセンも美少女も大元がポップカルチャーなので多くの人が楽しめる大衆娯楽なのかもしれない
- なぜアキバでラッセンの絵が売ってるのか(オタクはラッセンが好き?)
- 最近流行りの三角形を周囲に飛ばすのはハイアート的演出ではないか?→子供向けではなく、大人向けということを明らかにするため。

ニセコイ

- キャラクターがの性格がはっきり分かれている作品。
- それぞれの女の子が好きな人が単巻買いすることを狙った。
- 普通はBlu-rayのデザインは1つ作って、次巻以降はその型にはめてく→ニセコイはすべて違うデザイナーが違う文脈で作った。
- 実際にスタジオで撮影するように美術セット・キャラのポージングなどを指定し、シミュレーションしていった
- 1巻は80sポップテイスト、2巻は和モダン、3巻は横浜のようなマリンスタイル、4巻はブリティッシュ
- グリッドだけちゃんと決めておいて毎巻違うデザイナーに投げていった

 

といった大変濃い内容でした...すごい(小並感)。

 

自分も最近虹絵に★や文字を乗せたりするようになり、作例のなぜ★や文字を乗せるのか、背景は白または単色にすると良いのか?ということが今まできっちり言語化できていなくてモヤッとしていたのですが、ようやくスッキリしました。ありがとうございました!

 

また、Tsuyoshi Kusano Design Co., Ltd.の草野剛さんが度々紹介されていたのですが、また違う文脈でデザインされていると思うので草野さんのお話も聴いてみたいと思ったのでした。